認知症に対する運動療法と 高齢者に対して行う運動療法
認知症に対する運動療法は 高齢者に対して行う運動療法とは少し異なります。
認知症の方には手順をシンプルにしたり、分かり易い動きにしたりと工夫とコツが必要ですが、様々な形でアプローチして活動量を増やしていきましょう。身体面への有効性とともに、精神面への効用が期待出来ます。
何故なら障害された大脳皮質の部分や疾患の進行度合いにより、個々の能力の程度が異なるために、画一的な治療プログラムでは効果が出にくいようです。
特に認知症患者様は運動を継続して行うのが苦手です。認知症高齢者の場合、特に安静にしていたり、刺激の乏しい家の中に閉じこもる生活になりやすく、更にものを考えたり判断する精神機能が衰えてしまいます。
ですが運動をしないと、筋肉の萎縮、歩行能力の低下、臓や肺機能の低下、立ったり歩いたりする時に疲れやすかったり、息切れなどがでることがあります。更に悪循環です。
介護予防の観点からも起居移動動作能力や四肢の関節可動域が保たれていることは、ご家族者の負担の軽減にもつながります。
早めの介護予防を意識して行いましょう。
アルツハイマー型認知症の経過
アルツハイマー型認知症の経過について
初期 忘れていることを忘れています。食べた夕食の内容を忘れているのではなく、先ほど夕食を食べたこと自体を忘れてしまうといった症状が見られます。
中期 段々と現在と過去の区別がつかなくなります。近い時期の記憶からなくなっていき、過去の記憶は比較的残りやすいです。症状として代表的なものが徘徊症状です。
例:過去の記憶通り朝に出社しようと家を出て、もともとの目的を忘れてしまい外で混乱してしまう。 尿意や便意が分からず、失禁が目立ちます。
後期 脳萎縮がさらに進行して、言葉の話す量も意味も失われていきます。
食事に集中できないため介助が必要になり、歩行が緩慢となり姿勢が前倒したり、左右どちらかに傾いていたりします。
アルツハイマーに進行はは個人差も大きいので早期発見、早期治療が大切です。
詳しくはカテゴリーのアルツハイマーもクリックして下さいね。
寝たきり状態からの運動療法
寝たきり状態の人の運動療法
認知症が進行し、すでに寝たきり状態にある人には、座る事に慣れてもらい、「座位を保ち生活する」を目標にリハビリしていきます。
座ることにより、精神の覚醒、身体のバランス機能、心肺機能が寝ている状態よりも向上します。継続することで体力がついてきます。 座位による効用は、褥瘡(じょくそう:床ずれ)の予防、座位で食事ができること、ポータブルトイレで排泄ができること、車椅子での移動が可能になることがあげられます。
運動の継続が大切
アルツハイマー病の認知症では、パーキンソン病と違い上肢や下肢を動かす筋力や運動制御などの基本的運動機能は維持されてます。
ですので認知障害があっても様々な運動を実行することが可能です。運動のしかたを順追って指導する事が大切です。
認知症高齢者の運動はご家族の理解が不可欠です、何故なら転倒事故等リスクは必ず存在しているからです。
認知症高齢者に対しては行いやすい動作を選定し、転倒事故への配慮など安全性を確保し、緊張しない環境で行うことが必要です。 転倒、骨折などの安全面を配慮すると、平行棒での歩行、座位での体操などの単調な運動となってしまいがちですが、音楽、レクレーションなどを用いて楽しく他者と触れ合うことで運動への興味を維持し徐々に運動メニューを増やしていきましょう。
認知症、アルツハイマー病の基本的な運動療法
運動療法の適応
運動療法の適応としては、認知症の初期もしくは早期における身体活動を促すことにより、興奮などの問題行動を軽減させるために導入される場合と、認知症が進行し、すでに寝たきり状態にある人の日常生活動作能力を向上させる場合が考えられます。
運動療法の種類
(1)関節可動域訓練
徒手(としゅ:素手)にて関節をゆっくり動かし可動域広げていく運動を行います。
(2)筋力増強訓練
筋力を増強するためには、筋肉に負荷をかける抵抗運動です。
(3)持久力増強訓練
全身持久力訓練としては、大きな筋群を用いたリズミカルな運動、歩行、などが有ります。
(4)基本動作訓練
寝返り、起きあがり、ベッド上の移動、坐位、椅子からの立ち上がりなどの起居動作訓練と車いすやトイレへの移乗動作、歩行と散歩などの移動動作訓練などが有ります。
認知症に対する療法 【マッサージ療法、バリデーション、ペット療法、絵画療法など、その他】
認知症に対する各種療法としてはマッサージ療法、バリデーション、ペット療法、絵画療法などなどいろいろあります。
認知症高齢者に対して、十分時間をかけてマッサージを行うものから、愛護的にやさしく触れるものまで色々な方法が有ります。
マッサージ療法は、ゆっくりとしたマッサージを施行することにより、リラックスした状態にして、不安行動、歩きまわったり、介護者への抵抗を減少させる効果があります。
バリデーション バリデーションは、認知症高齢者とコミュニケーションをとるための療法の事です、痴呆症の方が騒いだり、徘徊したりすることにも「意味がある」として捉え、なぜ騒ぐのか、なぜ徘徊するのかを患者の歩んできた人生に照らして考えたり、共に行動したりするというもので、「共感して接すること」に重点を置いた療法です。方法としては、共感と同意を持って話しを聞く、事実に基づいた言葉を使う、認知症の人の言葉を繰り返す、アイコンタクトをとる、やさしく触れる、思い出話をするなどのテクニックを用いることで、認知症高齢者の理解、自尊心の回復、他の人とのコミュニケーションの促進、ストレスや不安の軽減、介護者との信頼関係の構築を図る療法です。 バリデーションのテクニックは、スタッフや家族が簡単に習得できる点が特徴のようです。
ペット療法 犬やネコなどの動物に触れたり、一緒に遊んだりすることにより、情緒の安定や問題行動の減少を図る治療です。 施設によっては金魚、小鳥などの身近なペットでも構いません、患者様に係りをお願いする事も効果ありです。
人形を抱かせるドールセラピー(人形療法)もあります。ペット療法と同じような効果が有ります。ペットが良いかドールが良いかは患者様によります。
絵画療法 レクレーション療法のプログラムにも導入される治療法で、水彩画、油彩、クレパスなどで絵を描く療法です。絵を書くことを通じて、自分自身の現在を表現し、他の人々とよく交流することができるようになります。 また認知症高齢者の精神機能を活発化させ、自発性、集中力や意欲面を向上させるのに効果があります。
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